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ドバイ政府主導で都市を彩る創造産業 ― 観光・美容・エンタメの最前線

  • 執筆者の写真: 金融経済アナリスト | 桑田 稜子
    金融経済アナリスト | 桑田 稜子
  • 5 日前
  • 読了時間: 5分

【金融経済アナリストが読み解くドバイ第2回】

世界の都市が競い合う時代において、なぜドバイはこれほどまでに企業と人材を惹きつけ続けているのか。

本コラムでは、ドバイ在住18年の金融経済アナリスト・桑田稜子氏が、現地での生活実感とグローバルな金融・経済分析の視点を重ね合わせながら、政府主導で育てられてきた観光・美容・エンタメといった創造産業が、いかに都市ブランドと経済成長を同時に押し上げてきたのかを読み解きます。



はじめに:「都市そのものがブランド」のドバイ


世界の都市間競争は、もはやインフラや税制だけでは語れません。

いま都市の価値を決定づけているのは、「どんな体験と物語を生み出せるか」というクリエイティブの力です。

その最前線に立つのがドバイ。政府主導で創造産業を育て、観光・美容・エンタメ・コンテンツを都市戦略として組み込むことで、ドバイは「都市そのものがブランド」と呼ばれる存在へと進化してきました。

今回は具体的な事例を通して、ドバイのクリエイティブ産業がいかに都市価値と経済を同時に押し上げているのかを読み解いていきます。




1. 「都市そのものがブランド」と言われるドバイの戦略的背景


事例:Dubai 2040 Urban Master Plan


ドバイの都市ブランディングを語るうえで、象徴的なのがDubai 2040 Urban Master Plan。

これは単なる都市開発計画ではなく、「どんな都市体験を提供するか」を先に定義した国家レベルの設計図です。


このマスタープランでは、


  • 緑地・公共空間の大幅拡張

  • 15分都市(生活圏の最適化)

  • 文化・観光エリアの再定義

  • 居住者の幸福度を軸にした都市設計


が明確に掲げられています。


重要なのは、経済成長より先に「住み心地・体験価値」をKPIに置いている点です。ドバイは「映える都市」を作っているのではなく、世界中の人がここで生きたい!と思う都市像をブランドとして設計しているのです。




2. 観光・エンタメイベントが都市イメージをどう更新しているか


事例:Expo 2020 Dubai(レガシー活用)


万博自体は2022年に終了しましたが、注目すべきはその「アフターEXPO戦略」です。

会場は現在 District 2020(後にExpo City Dubai) として再開発され、


  • スタートアップ拠点

  • 研究機関

  • 文化・教育施設

  • 国際イベント会場


として活用されています。

つまりEXPOは「一過性の巨大イベント」ではなく、未来都市のショーケース → 実装実験 → 恒久都市機能へと転換されました。この事例は、ドバイがイベント=都市のイメージ広告ではなく、イベント=都市の未来を先に体験させる装置として使っていることを示しています。




3. 美容・ファッション・ウェルネス産業が成長する背景


事例:Dubai Health Experience(DXH)


ドバイの美容・ウェルネス産業を象徴するのが、政府主導のDubai Health Experience(DXH) です。

DXHは、「医療」「美容・整形外科」「ウェルネス」「リカバリー」を観光体験として一体化した公式プラットフォームで、海外からの利用者が安心して医療・美容サービスを受けられる仕組みを整えています。


ここで重要なのは、美容や医療をラグジュアリー消費ではなく、都市価値として扱っている点です。

ドバイでは、


  • 高級スパ

  • 最先端美容クリニック

  • 予防医療・ホリスティック医療

  • 不妊治療


が「都市の魅力を体感するインフラ」として位置づけられています。

その結果、美容・ウェルネスは観光収益+都市イメージ向上の両輪として機能しているといえます。

 

 


4. 日本のアニメ・ゲーム・アートとドバイの融合可能性


事例:Dubai Program for Gaming 2033


2023年に発表された Dubai Program for Gaming 2033(DPG33) は、ドバイがゲーム産業を「国家戦略産業」として明確に位置づけた象徴的な事例です。


このプログラムでは、


  • 世界トップ10のゲーム都市入り

  • 約3万人の雇用創出

  • スタートアップ・IP育成

  • 国際イベント・eスポーツ誘致


といった明確なKPIが設定されています。

これは、日本のアニメ、ゲーム、キャラクターIPにとって極めて大きなチャンスでもあります。

ドバイでは「日本文化=ニッチ」ではなく、グローバルIPとしてどう経済実装するかという視点で受け止められます。展示・イベント・教育・観光などを組み合わせた「共創モデル」が、今後現実的になっていくでしょう。




5. ドバイは「文化×経済」のハブへどう進化するか


事例:Dubai Design District(d3)


ドバイの未来像を象徴する場所がDubai Design District(d3)です。

d3は、


  • ファッション

  • デザイン

  • アート

  • メディア

  • スタートアップ


が集積する政府主導のクリエイティブ特区で、単なるオフィス街ではなく「文化を生み出す生態系」として設計されています。

ここでは、企業をはじめ、クリエイター、投資家、教育機関が日常的に交差し、文化がそのまま経済価値へ転換される環境が整っています。

今後のドバイは、「文化イベントを開催する都市」ではなく、文化が産業として循環する都市へ進化していくでしょう。




おわりに:

ドバイのクリエイティブ産業は、感性や華やかさだけで成り立っているのではありません。

都市計画、政策、産業設計、グローバル戦略が緻密に組み合わされ、文化そのものが経済エンジンとして機能する都市モデルが最初から構築されています。

だからこそ今、ドバイは「ビジネス都市」から「文化×経済の未来都市」へと、確実に進化しているのです。


桑田 稜子
< 筆者紹介 >

桑田 稜子(Ryoko Kuwata

Founder & CEO, INSPIRE LAB GROUP


2008年よりドバイ在住の経済アナリスト・実業家・メディアプロデューサー。

INSPIRE LAB GROUP CEOとして、マクロ経済と資本の動きを読み解き、個人と企業の未来価値をデザイン。グローバルビジネス、メディア、クリエイティブ、ウェルネス領域で新しい地球の価値創造を支援している。


🌐 公式サイト:https://www.inspire-lab.com/

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