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【国際税務コラム第2回】知らないでは済まされない - 日本の国際税務

  • 執筆者の写真: 公認会計士(CPA) | 岡本 信吾
    公認会計士(CPA) | 岡本 信吾
  • 9月3日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月17日

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第1回ではドバイの魅力を確認しましたが、その一方で、いくらドバイが「住めるタックスヘイブン」だとしても、日本の税制や国際ルールを無視して進出してしまうと、思わぬ課税リスクに直面する可能性があります。

そこで今回は、日本の経営者や投資家が必ず押さえておくべき「タックスヘイブン対策税制」やその他の重要な国際税務ルールについて、岡本先生に伺いました。



質問1: 多くの日本の資産家や経営者が知っておくべき「タックスヘイブン対策税制」について教えてください。


タックスヘイブン対策税制について一言で説明すると、「ドバイに会社を設立しても、経済的な実体がないなら日本で課税するよ」という制度です。
これは日本の居住者が租税負担の軽い国に設立した実体のない会社(ペーパーカンパニー)等に利益を移し、日本国内の税負担を回避する行為を抑止するための制度です。実際に該当するかどうかは、以下のようなフローチャートとなります。


出典:岡本 信吾「日本会計士向けにUAE税制セミナー」
出典:岡本 信吾「日本会計士向けにUAE税制セミナー」

ALAN:つまり、会社を作っただけでは、実態が伴わなければ日本の課税対象から逃れられない、ということですね。



質問2:もしドバイ法人がタックスヘイブン対策税制の適用対象となった場合、具体的にどのような税金が課されることになるのでしょうか?


タックスヘイブン税制の対象となり、合算課税の対象になってしまった場合、日本側の親会社とドバイ側の子会社の所得を合算し、ドバイで法人税を納税していたとしても日本側で税額を再計算し、納税することになります。

例えばドバイ側で9%の法人税を納税していた場合、日本側の法人税率(約30%)との差額である約21%が、タックスヘイブン税制により日本側の法人税申告時に課税されることになります。

これは、ドバイ法人の株主が個人の場合でも同様です。個人の場合には、ドバイ法人の所得と日本側の個人所得が合算され、その合計額に対して所得税が課されます。


仮に合算課税の対象とならなかった場合でも、不動産の運用収益や金利収入など、いわゆる資産運用による収益は「受動的所得」として日本側で合算・課税されます。ただし、一定の金額もしくは割合未満であれば、影響が軽微として免除される場合もあります。



ALAN:ドバイで既に法人税を納めていたとしても、日本のタックスヘイブン対策税制が適用されれば、日本の法人税率との差額分が追加で課されてしまう、という仕組みなのですね。



質問3:タックスヘイブン対策税制の適用を受けずに、ドバイで事業や資産運用を行うための「鍵」となるポイントは何でしょうか?

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ドバイは日本と比べて非常に低い税率となっており、タックスヘイブン税制の影響を受けやすい国です。
この税制の適用を避けるためには、ペーパーカンパニーにならないよう、実態のある事業を行うことが必要です。具体的には、実際にオフィスを構える、従業員を雇用する、現地での事業活動を行う、そして重要な意思決定を現地で行っている、などの要件を満たすことが求められます。

仮にこういった要件を満たしたとしても、受動的所得については合算課税される可能性があります。
そのため、一定の金額未満の所得となるよう、運用金額も含めてうまくプランニングする必要があります。



ALAN:つまり、会社の実体を持たせることが最大の鍵なのですね。ただし資産運用系の収入は別枠で課税される可能性があるので、慎重な設計が必要ですね。



質問4:タックスヘイブン対策税制の他にも、日本人がドバイで事業や資産運用をする上で注意すべき重要な国際税務のルールはありますか?先生が実務でよく問題になると感じる点をいくつか教えていただけますでしょうか。


これは非常に複雑な問題で、日本側の税制だけを考えても以下のような国際税務上のさまざまなルールがあります。

これ以外にUAE側の法人税法やVAT法、日UAE租税条約についても理解する必要があります。

実際に移住を検討されている方やドバイで事業を行う予定の方は、早い段階で税務の専門家へご相談されることをおすすめします。

  1. CRS(情報交換制度)

  2. 国外財産債務調書(海外資産が5,000万円超の場合)

  3. 移転価格税制

  4. 出国税(株式価額が1億円超の場合)

  5. 居住者と非居住者の認定

  6. 出国時の実務の理解(住民票除籍や納税管理人の選任等)

  7. 移住後の183日ルールのプランニング

  8. 国外から行われる「電気通信利用役務の提供」にかかる消費税



ALAN:いずれも知らなかったでは済まされず、適切な理解と対応が求められるルールですね。

日本人がドバイで事業や資産運用を行う際には、タックスヘイブン対策税制をはじめとした国際税務ルールを正しく理解しておくことが不可欠だとわかりました。

形だけの進出では大きなリスクを招きかねず、実態と計画性を備えた設計が求められます。


次回は「資産を法人で守ることの本質」をテーマに、節税・承継・リスク管理の観点から資産管理法人の活用について詳しく解説します。


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< 筆者紹介 >

岡本 信吾(Shingo Okamoto, CPA)

Alwasiq Management Consultants ジャパンデスク責任者 / 公認会計士(Certified Public Accountant)


ドバイ在住の会計・税務アドバイザー。大手監査法人EYにて5年間勤務した後、東京都港区にて税理士法人を開業。現在はUAE(ドバイ)のAlwasiq Management Consultantsにて、ジャパンデスクを率い、100社以上の日系企業を対象に、国際税務・法人設立・資産管理に関するコンサルティングを提供中。




「日本とドバイをつなぐ税務のプロフェッショナル」として、クロスボーダー取引・ドバイ進出支援を行っています。

🌐 公式サイト:https://alwasiq.net/jp/

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