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健康と豊かさを両立する ― ウェルネス都市ドバイの挑戦


【金融経済アナリストが読み解くドバイ第3回】

なぜドバイは、医療・美容・フィットネス・メンタルケア・デジタルヘルスを一体化させ、「ウェルネス」を次の国家成長エンジンとして位置づけることができたのでしょうか。

本コラムでは、ドバイ在住18年の金融経済アナリスト・桑田稜子氏が、現地での生活実感とグローバルな金融・経済分析の視点を重ね合わせながら、ウェルネス都市ドバイが生み出す新しい産業構造を読み解きます。



1. ドバイが掲げる「ウェルネス都市」とは何か

ドバイにおける「ウェルネス都市」とは、単なる医療や健康増進にとどまらず、経済成長・都市設計・テクノロジー・ライフスタイル・精神的充足を横断的に統合した都市モデルを指します。

健康は「コスト」ではなく国家競争力を高める投資対象であり、個人のQOL(生活の質)向上が、結果として生産性・創造性・都市価値を押し上げるという思想が根底にあります。

これは、金融・不動産・観光に続く次の成長軸として、ウェルネスを位置づけている点に、ドバイらしい戦略性が表れています。




2. 国家戦略として重視される背景 ― 社会的・文化的価値観


ドバイがウェルネスを国家戦略として重視する背景には、いくつかの明確な価値観があります。

第一に、多国籍社会における「持続可能な都市運営」。世界200カ国以上の人々が暮らす都市において、医療・健康の質は社会安定の基盤です。

第二に、富の定義の転換。単なる経済的豊かさから、「健康・時間・精神的余白」を含む総合的な豊かさへと価値基準が移行しています。

第三に、未来志向。平均寿命を延ばすこと以上に、「いかに良い状態で生きるか(Healthspan)」が重視され、ここにテクノロジーと投資が集中しています。


デジタルヘルス・AI診断に見る進化と成果

ドバイでは、デジタルヘルスとAI診断がすでに社会実装フェーズに入っています。電子カルテの完全デジタル化、AIによる画像診断・予防医療、ウェアラブルデータと連動した健康管理などが進み、医療は「治療」から「予測・予防」へと明確にシフトしています。

特筆すべきは、これらが金融・保険・都市データと連携している点です。

健康データは個人の資産価値・ライフプラン設計にも結びつき、まさに健康が経済の一部として機能し始めています。




3. 富裕層ライフスタイルにおける「美容×健康」の新潮流


生活者、とりわけ富裕層の間では、「美容」と「健康」を切り離さない動きが顕著です。

見た目の若さや美しさだけでなく、ホルモンバランス、睡眠、腸内環境、メンタル、エネルギーレベルまで含めたホリスティックなアプローチが主流になってきています。

高級スパ、ウェルネスリトリート、パーソナライズド栄養、マインドフルネス、スピリチュアルケアまで含めた体験型サービスが一気に増え、「自分のコンディションをデザインする」という意識がライフスタイルに組み込まれています。

これは、INSPIRE LABが重視してきたホリスティック・ウェルビーイングの考え方と、極めて親和性の高い潮流です。

 



4. 象徴的・先進的な取り組み

象徴的な存在として挙げられるのが、Dubai Future Foundationを中心とした未来医療・ヘルスケアの実証プロジェクトです。

官民連携でAI、バイオ、ウェルネスを横断的に扱い、規制緩和とスピード感ある実装を同時に進める体制は、他国にはない強みです。

また、Dubai Health Authorityによる医療・ウェルネスの国際標準化も、海外企業にとって参入しやすい環境を整えています。


もう一つ象徴的なのは、ハムダン王子自身が、マラソンやフィットネスチャレンジといった取り組みに率先して参加し、ソーシャルメディアを通して、国民に向けて健康的なライフスタイルを呼びかけている点です。

リーダー自らが行動で示すことで、ウェルネスは「個人の努力」ではなく、「社会全体で共有される価値観」として浸透していきます。これはトップダウン型の政策に強みを持つドバイならではのアプローチであり、健康・運動・自己管理が文化の一部として定着していく重要な要因となっています。


日本企業へのチャンスと活かせる強み

この分野において、日本企業には大きなチャンスがあります。

最大の強みは、予防・未病・継続的ケアに対する思想と技術、そして「繊細さ」と「信頼性」です。

日本のウェルネスは、派手さよりも本質的な改善、長期視点、身体と心の調和を重視します。これは、短期的な流行を超えた価値を求めるドバイの富裕層・政策層に強く響きます。特に、ウェルネス×教育、ウェルネス×リーダーシップ、ウェルネス×スピリチュアリティといった領域は、今後の成長余地が大きい分野です。




おわりに:

日本的価値は、単なる海外展開の文脈で語られるものではなく、ドバイが描く都市戦略や富裕層市場、さらには国境を越えたグローバルネットワークと結びつくことで、はじめて本質的な価値を発揮します。

重要なのは、表層的な進出支援にとどまらず、背景にある思想や哲学を事業構造そのものに組み込み、持続可能な形で展開していくことです。

実際にこうした視点をもとに、構想段階から戦略設計、現地との接続までを丁寧に進めていく動きも、少しずつ広がり始めています。


桑田 稜子
< 筆者紹介 >

桑田 稜子(Ryoko Kuwata

Founder & CEO, INSPIRE LAB GROUP


2008年よりドバイ在住の経済アナリスト・実業家・メディアプロデューサー。

INSPIRE LAB GROUP CEOとして、マクロ経済と資本の動きを読み解き、個人と企業の未来価値をデザイン。グローバルビジネス、メディア、クリエイティブ、ウェルネス領域で新しい地球の価値創造を支援している。


🌐 公式サイト:https://www.inspire-lab.com/

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