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【国際税務コラム第4回】ドバイ法人ストラクチャーの徹底解剖

  • 執筆者の写真: 公認会計士(CPA) | 岡本 信吾
    公認会計士(CPA) | 岡本 信吾
  • 10月15日
  • 読了時間: 5分
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第3回では、資産を「個人で持つか」「法人で持つか」という視点から、資産管理法人を活用する本質を解説しました。

今回はさらに踏み込み、実際にどのような形で法人を設計し、活用していくべきか代表的なストラクチャーと注意点について岡本先生に伺います。



質問1: ドバイ法人と日本法人の組み合わせで、先生が最もよく見られる代表的な会社形態(ストラクチャー)を教えてください。


【よく見られる代表的なストラクチャー】

① 日本の既存法人とは別資本で、ドバイ法人を新たに設立する

② 日本法人が親会社となり、ドバイに子会社を設立する

③ ドバイ法人を親会社とし、日本法人を子会社として新設または買収する

④ 日本法人の支店や駐在員事務所としてドバイに拠点を設ける

⑤ ドバイ法人を設立しつつ、居住地はタイやマレーシアといった第三国とする


最もよくあるのは、日本で既存法人を経営したままドバイで別資本として法人を立ち上げる方法(①)です。

次に日本の法人を親会社としてドバイに子会社を設立する方法(②)があり、これら2つが日本を軸として事業を伸ばしてこられた方がよく取る会社形態になります。

ドバイを軸に事業展開をする方だと、ドバイ法人を親会社として日本の子会社を新設もしくは買収する方法(③)もあります。これは主に租税条約を活用して効率的に日本に資金を送金したい方が使う方法です。

そのほか、大会社だと日本法人の支店や駐在員事務所としてドバイに進出する方法があったり(④)、変則的ですがドバイ法人を立ち上げるものの自身はタイやマレーシアに住むなどの事例(⑤)も最近はあり、ストラクチャーも多様化しているのが現状です。


ALAN:ひと口に「ドバイ進出」と言っても、実はかなり多様な形があるんですね。日本を軸にするのか、ドバイを軸にするのか、あるいはどちらも並行して運営するのか。目的や資金の流れによって最適解が変わる、というのがこのテーマの奥深いところです。



質問2:では、そのストラクチャーを検討・導入する上で、経営者が直面しがちな最大のリスクや、法務・税務上の重要な注意点について教えていただけますか?


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①が最もよくある事例ですので、今回はこのケースに回答します。

このストラクチャーは、日本ですでに安定した事業フェーズにあり、自分自身が海外に移住しても引き続き事業展開が可能な業種の方が多い印象です。

例えば、会員制ビジネスやYoutube事業、各種コンサルティング事業など主にオンラインで完結する事業が多いです。こういった事業は飲食業やクリニックなどと比較して必ずしも場所を必要とする業種ではなく、身一つで事業を動かしやすいので再現性が高いのが特徴です。


一方、法務リスクや税務リスクは忘れずに検討する必要があります。

例えば、ドバイ法人を設立した場合はトラブルになった際にどこの国の法律に準拠するかについて取引先とよく決めておかなければなりません。

また、労働法も日本とは異なるため、ある程度の労務をケアしておかないと罰金がかかってしまう可能性があります。その他、コンプライアンス系の手続き(アンチ・マネーロンダリングなど)も忘れずに対応しないと、ライセンスが止まったり罰金がかかるケースもあります。


次に税務リスクという観点では、日本側で課税されるリスクについてはしっかりとケアしておくべきです。

例えばオンライン系の事業では、ドバイ法人の売り上げであっても消費税を日本の税務署に納税しなければならないケースがあります(国境を越えた電子通信利用役務の提供に係る消費税)。

ドバイにいるからと言って日本側での課税が完全になくなるわけではないケースがあることは一番最初にしっかりとケアしておかなければ、想定外の納税が発生してしまうリスクがあります。


その他、ドバイという低税率国においては日本側でも税逃れを許すまじと多くの税制を整備してきていますので、ストラクチャーの組成段階でしっかりと検討しておくことが大事だと感じます。必要以上に恐れる必要はなく、事前準備が重要、ということですね。


ALAN:法人ストラクチャーを作るとき、設立そのものよりも運用段階での法務・税務リスク管理が鍵になりそうですね。ドバイ=“税金が安い”というイメージだけで動くと、思わぬ落とし穴にハマってしまう。事前準備の重要性がよくわかります。



質問3:最後に、お客様がご自身の状況に合わせて最適なストラクチャーを選ぶために、自問すべき最も重要な「判断基準」は何だと思われますか?


どの方法も一長一短あり、またそれは事業フェーズによっても結論が異なると感じているため、どれが良いとは一概には言えず総合的に判断する必要があります。経営判断、ということですね。

一つ言えるのは、どの方法であっても税務リスクを完全に0にすることは出来ません。

どこにリスクが潜んでいるのか、リスクはどの程度なのかを定量的に判断し、そのリスクを受け入れることが出来るのか。またそのリスクを受け入れた先に得られるリターンはなんなのか。

本当に重要な意思決定ではChatGPTなどのAIにはできません。「自分なりの意思決定基準をしっかりと持つこと」こそが本当に重要な判断基準と呼べるのかもしれないですね。


ALAN:確かに、制度や税率の比較だけで最適解は出せませんね。

自分の事業フェーズ、目的、リスク許容度を冷静に見つめ直したうえで“意思を持って決める”ことが最も大切だと感じました。


次回は、こうして設計された法人をどのように運用・維持し、国際的な規制に対応して相続していくかについて、より実務的な観点から深掘りしていきます。


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< 筆者紹介 >

岡本 信吾(Shingo Okamoto, CPA)

Alwasiq Management Consultants ジャパンデスク責任者 / 公認会計士(Certified Public Accountant)


ドバイ在住の会計・税務アドバイザー。大手監査法人EYにて5年間勤務した後、東京都港区にて税理士法人を開業。現在はUAE(ドバイ)のAlwasiq Management Consultantsにて、ジャパンデスクを率い、100社以上の日系企業を対象に、国際税務・法人設立・資産管理に関するコンサルティングを提供中。




「日本とドバイをつなぐ税務のプロフェッショナル」として、クロスボーダー取引・ドバイ進出支援を行っています。

🌐 公式サイト:https://alwasiq.net/jp/

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